サブポリゴンの変位

ドイツ、フリードリッヒドルフの日食(黒い点になっている)。この絵では、下のグレースケール画像をSPDに適用し、地球上の凹凸を表現しています。

サブポリゴン変位(以下の文章ではSPDと省略します)は、原理的には従来の「変位」チャンネルと同じです。つまり、適用されたグレースケール画像の値を元に、レンダリング時にオブジェクトを変形させます(いくつかのモードではカラー画像も使えます)。従来の変位に対するSPDの利点は、レンダリング時にオブジェクトを細分化できる、という点にあります。これによって、荒いポリゴンに対してでも非常に精細でスムーズな変位を表現できます。元になるオブジェクトをモデリング時に十分に細分化しておけば、従来の変位でも同じ結果が得られますが、非常に多くのメモリと長いレンダリング時間が必要になるため、現実的ではありません。

SPDを使うと、たとえば数ポリゴンしかないオブジェクトに対して、テクスチャの明暗を元にして細かな凹凸をつけられるのです。このテクスチャには16bit画像も使えます。

SPDによって非常に細かく分割されたポリゴンを全てメモリに読み込んでレンダリングするために、Cinema 4Dは特殊なメモリ管理システムを使います。一般的に、仮想的なポリゴンをレンダリングするよりも、実ポリゴンをレンダリングする方が速いので、 SPDは速度的にも有利です。ここで、「仮想的なポリゴン」というのは、メモリに読み込まれず、必要に応じて生成されたり、HDから呼び出されるポリゴンを意味します。

もしバンプチャンネルを使ってオブジェクトの凹凸を表現している場合は、そのテクスチャを変異チャンネルに移し、SPDを働かせてみてください。ほとんどの場合、SPDの方がよりリアルで自然な結果をもたらします。
SPDはレンダリング時にポリゴンを変形させる機能であるため、「現在の状態をオブジェクト化」機能を使ってその形状を固定することはできません。この点も従来の変位と同じです。

SPDには次のような利点があります。:

ポリゴン数を増やさずに細かい形状を表現できます。エディタでポリゴン数を増やすと、エディタビューの表示が遅くなる、編集が困難になる、ファイルサイズが大きくなるなどの問題点があります。

オブジェクト表面の凹凸に関しては、ほとんどの場合、モデリングツールで形状を作るよりも、2Dテクスチャで表現したほうが簡単です。

従来この目的にはバンプチャンネルが使われてきましたが、実際にオブジェクトが変形しないバンプよりも、オブジェクトが変形するSPDの方が自然な結果が得られます。

Cinema 4Dには、アニメーション可能なシェーダがたくさんあります。これらのシェーダとSPDを組み合わせると、たとえば実際に波打つリアルな海などを表現できます。

SPDの設定は、属性マネージャかマテリアル編集の「変位」ページにあります。また、一般設定メニューにも変位 (MB)というオプションがあります。これは、SPDに割り当てるメモリ量を制限するためにあります。